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VINABOO季刊誌化記念 特別インタビュー 梅田 邦夫 駐ベトナム日本国大使

10/04/2019

 

 

 

ベトナムでは、急速な経済成長と共にスポーツ界も大きな飛躍を遂げつつある。昨年初めのサッカーU-23 ベトナム代表フィーバーの過熱ぶりは多くの人々の記憶に刻まれ、国全体が一丸となった。リオ五輪では、ついに初のベトナム人金メダリストも誕生した。今回は、日越スポーツ交流に並々ならぬ情熱を注ぐ、梅田邦夫駐ベトナム日本国大使にベトナムフットボールダイジェスト運営者がインタビューを実施。

 

来年に迫った東京五輪に向け、ますます加速する日越スポーツ交流について話を伺った。

 

★日越外交関係樹立45 周年の スポーツ交流について

 

- 2018 年は日越外交関係樹立45 周年の節目の年とあり、両国間で様々な交流が行われました。その一環で行われたスポーツ交流も例年になく活発でしたが、この1 年を総括した印象をお聞かせください。

 

2018 年の日越スポーツ交流事業を振り返ってみると、結果的にではありますが、圧倒的にサッカーが多かったという印象です。私自身、この地でサッカー交流を行わなければならないと強く自覚したのは、1 月のAFC U-23 選手権でのベトナム準優勝という結果を見てからなんです。それまでは、ベトナムがこんなに強いということを意識していなかったので、やれることは非常に限られていると思っていました。ところが、U-23 の結果を受けて、これは色々な可能性があると認識を改めたんです。

 

そこで、J リーグや日本サッカー協会に働きかけて、こちらから仕掛けた部分もあります。

 

 ただ、実際にはそれよりずっと以前から日本は、ベトナムでのサッカー交流を行っていました。トヨタのジュニアサッカー然り、川崎フロンターレの指導者派遣然り。サッカー交流で特に目立つのが育成年代向けの活動です。これは、これからも是非続けていかなければならないことだと思っています

 

 サッカー以外のスポーツの内訳は、柔道、空手、剣道、駅伝、卓球など。分類すると、日本の伝統的な競技が続いています。

 

駅伝も日本発祥。卓球は、若い世代を中心に日本人選手が世界で活躍しています。こうした日本が得意とする競技の普及活動が活発化している印象です。2020年には、東京五輪も控えていますし、スポーツの国際交流にも熱が入っているのでしょう。色々な協会や団体、また地域の方々から幅広い協力を得ることができ、非常にありがたいことだと感謝しています。

 

 今年のスポーツ交流事業の中で、特殊なものとしては、ハノイとホーチミンで毎年交互に開催されている「モッタイナイマラソン」があります。これは、ベトナム婦人新聞社の企画による交通事故防止のチャリティランで、もともとベトナム側が主体となった現地発祥のイベントです。もう一つは、ミズノによる子ども向け運動遊びプログラム「ヘキサスロン」の導入。ベトナムの課題の一つとして、以前から言われているのが、運動能力を高めるための体育カリキュラムが欠落していることがあります。そこに、ミズノが名乗りを上げて「ヘキサスロン」の初等教育導入を働きかけ、実際に、そういう方向に進みつつあります。実現すれば、ベトナム体育教育の発展に大きく貢献しますので、我々も是非後押ししていきたいです。

 

- 国際交流におけるスポーツの役割とは、どのようなものだとお考えですか?

 

 先日、セルジオ(※サッカー解説者セルジオ越後)がハノイ市で講演会を行いました。その時に彼が自分自身の体験も踏まえて、語っていたことですが、国際交流におけるスポーツの最も重要な役割というのは、人と人、そして、国と国を繋ぐことです。セルジオや我々の場合は、サッカーを通じて、その国を知り、多くの人々を知りました。これはどのスポーツも同じです。

 

2 点目は、相互理解を深めること。国民的スポーツというのは、その国の文化や歴史を反映しているものです。どうしてベトナムでサッカーが人気なのか、彼らはどんな応援をするのか、それらを知ることで理解は間違いなく深まります。3 点目は、国や人間を成長させることです。どういうことかというと、スポーツをやっていると、必ずライバル関係というものが生まれます。

 

国際間でいえば、ブラジルとアルゼンチン、日本と韓国。強烈な競争意識を持ちながらも、互いを高めあう存在になっています。

 

- 2018 年の日越スポーツ交流で、特に印象深かった活動はありますか?

 

 福島県で開催されたU-17 日メコン・サッカー交流大会ですね。U-17 ベトナム代表のメンバーは、この日本滞在中、日メコン首脳会議に出席していた国家首脳たちから表彰されたんです。このことは彼らにとって、大きな励みになったと思います。そ
して、アジア大会出場のために、岡山県美作市でキャンプをしたサッカー女子代表チームの壮行会。女子代表は、前年のSEA Games で優勝したときも直前合宿を美作市で行っており、とても縁起がいいキャンプ地とのことでした。初戦はなでしこジャパンに大敗しましたが、ライバルのタイに勝って、決勝トーナメントに進出でき、国内でも称賛されました。そして、個人的にも関わることになった日越サッカー協会のパートナーシップ再締結。サッカー好きのフック首相が日メコン首脳会議で訪日するタイミングで、安倍首相も立会いの下、締結することができ、非常に良かったです。このパートナーシップをベースに今後、日越サッカー交流はさらに活発化していくことでしょう。

 

★ベトナムサッカーについて

 

— ベトナムで最も盛んなスポーツといえば、やはりサッカーです。特に2018 年はベトナムサッカーにとって躍進の1 年で、国
際大会のたびに国中が大変な騒ぎになりましたが、現地にいて、この地のサッカー熱をどう感じていますか?

 

 正直言って驚きました。サッカーが強い、サッカーで勝つということが、この国にとてつもないエネルギーを与えていると思います。それを目の当たりにして、羨望を抱いてしまうほどに。それと同時に二つのことを感じました。一つは、ベトナムサッカーのさらなる発展のために、何かお役に立ちたいということ。もう一つは、日本とベトナムの協力の延長線上で、どのようにしたらサッカー分野での協力を促進させていくことができるのかということ。そうしたことをベトナムのサッカー熱を見て、
考えるようになりました。

 

- 梅田大使は、日本サッカー協会国際委員も務めておられますが、どのような活動をされているのでしょうか?

 

 日本政府の代表者である大使としての顔、サッカー協会の国際委員としての顔、二つの顔を持ち合わせることで、色々なところに顔を出すことができるわけです。先ほどお話したパートナーシップにしても、両国首脳の前で締結できたのは、この二つの顔があったからこそ実現できたものだと思います。こうした色々な活動を通じて、ベトナムでサッカーをする子供たちを励ましてあげたい。ベトナムサッカーがこれから世界に飛躍していく手助けをしたいという気持ちを持って活動しています。

 

- 数年前までは、男子と女子のベトナム代表監督を日本人が務めていました。トップレベルだけでなく、草の根レベルも含め、こうした人材の交流については、どのように見ていますか?
 
 現在、八木氏がハノイFC 女子チーム(※ベトナム女子リーグ2018 のレギュラーシーズン女王)の監督を務めてくれていますが、もっともっと増えて欲しいですね。男子のベトナム代表を率いている韓国人のパク監督を見ると、彼の存在がどれだけベトナムと韓国の関係強化に貢献しているのか、計り知れないものがあります。選手でも、監督でも、トップレベルでも、草の根レベルでもいいのですが、そうやって貢献してくれる人がいてくれるのは、間違いなく国全体の財産です。

 

★梅田大使とサッカーのかかわりについて

 

- スポーツ交流、とりわけ、サッカー交流に並々ならぬ情熱を持つ大使ですが、大学時代は、サッカー部でキャプテンを務めてい

たと聞いています。大使とサッカーの出会いをお聞かせください。

 

 もともとは野球少年だったんですが、中学生のときに開催されたメキシコ五輪で、日本代表が銅メダルを獲得したのをテレビで観て、サッカー面白いじゃないかと思って、ボールを蹴りだしたのが始まりです。本格的にサッカーに取り組み始めたのは大学に入ってから。外務省に入省後、スペインで2年間語学研修をしたときは寮のチームに入れてもらい、よくボールを蹴っていました。あまりのレベルの違いに驚愕したのを覚えています。当時は、よくスペインリーグも観に行きました。日本に戻って以降、しばらくサッカーから離れていたのですが、あれはJ リーグ発足した後だったか、息子が入団した地域のクラブの監督から、経験者だからという理由でコーチの手伝いを頼まれたんです。そこからサッカーの人脈が広がって、現在まで繋がっているという感じですね。セルジオとも、その頃からの知り合いです。

 

- ベトナムに赴任される以前は、サッカー王国ブラジルの日本国大使館で働いておられましたが、ちょうどその時期、ブラジルではリオ五輪とサッカーワールドカップが開催されました
 
 大使としてブラジルに行くということは当初、全く自分の頭の中になかったんです。ところが、ワールドカップの1、2 年前のある日、セルジオと友人の平野氏(電通)と食事していて、次はブラジルでワールドカップがあるから、梅田さんが大使になって、日本代表を裏方でサポートすればいいじゃないかという話になり、それで、その気になりました。ワールドカップ開幕の数ヶ月前に赴任して、実際に何をやったかというと、現地での安全対策と応援体制の整備。非常にありがたかったのは、日系人の方々
が全ての試合会場でサポートしてくださったこと。リオ五輪のときもサッカー代表チームが練習試合を含めて5 試合を行いましたが、各地でやはり日系人の方々の助けがありました。そして、ブラジルで良い思い出として残っているのは、日本サッカーの発展に貢献した「ブラジル選手に感謝する会」を主催したこと。ちょうどブラジルにいらした安倍首相を迎えての会でしたが、ジーコ、ドゥンガ、サンパイオ、アルシンド、ビスマルク、セルジオ等が参加して、安倍首相から彼らに感謝の言葉をもらい
ました。

 

- 2020 年には、日本で56 年ぶりとなる夏季オリンピックが東京で開催されます。ベトナムは前回のリオ五輪で、初の金メダリ
スト(男子射撃)が誕生するなど、今後は五輪への注目度も高まりそうな気配です。東京五輪に向けて、日越のスポーツ交流も

引き続き行われていくことと思いますが、どんなことを期待しますか?

 

もちろん男子サッカーで出場できればいいのですが、それ以外の競技でも、一人でも多くのベトナム人選手に東京五輪に出場してもらいたいと思っています。現在、日本で暮らすベトナム人は30 万人にも上り、日本経済を支えてくれています。在日ベトナム人による犯罪が増えているなどの問題も発生してはいますが、基本的には、ベトナムの方々は日本に強い憧れを持っているのも事実です。東京五輪という機会に、良いイメージを国際社会に発信してもらいたい。自国の選手たちが出場して活躍するということが、ベトナムという国の一体感を生み、エネルギーになると思うんです。その舞台が東京五輪であれば、それはとても素晴らしいことです。